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労務管理Q&A


会社や店舗は、従業員の方を雇用したら、様々な法的な規制を受けることになります。逆に、従業員の方たちは、会社や店舗に属することになったら、労務提供の義務を負うと同時に、様々な法的な保護を受けることになります。

労働基準法は労働刑法です。つまり、違反すれば罰則が課せられます。「知らなかった」とか、「我が社の慣行ではこうだから」というのは、通用しません。最近では、法律に興味をお持ちの従業員の方も多いため、雇用する側の会社や店舗も、各種労働法に関する基礎的な知識を持っていることが必須です。

さらに、実務の上では、法令には明確に規定されていない、労務管理においての「微妙な判断」が必要なときもあります。このページでは、職場で実際に起こりうるケースを中心に、労務管理についての具体的な説明を行っていきたいと思います。



Q1 始業前の清掃時間は労働時間に含まれる?

A1 清掃行為が会社の指示であれば労働時間となります。

逆に言えば、従業員の方の「自主的な行動」である場合は、労働時間に含まれません。ただ、大抵このような清掃時間は、直接的な「指揮・命令」ではないにしろ、慣行となっているケースが多いと思われます。この場合は、「義務を余儀なくされたもの」と判断されれば、労働時間と扱われます。 

但し、労働時間と扱われるのは、あくまでも「社会通念上必要と認められるもの」に限ります。始業の1時間前から出社して、だらだらと清掃を続けたとしても、全ての時間が労働時間と扱われるわけではありません。



Q2 残業が発生したら新たな休憩時間が必要? 
A2 60分の休憩時間がが与えられていれば、新たな休憩時間は必要ありません。

労働基準法では、6時間超の労働時間に対して45分以上、8時間超の労働時間に対して60分以上の休憩時間を与えなければならない、としています。例えば、始業9時・終業18時の会社の場合は、少なくとも60分の休憩時間を与える必要があります。残業の必要性があって、その日に20時まで労働したとしても、新たに休憩時間を与える必要はありません(注)。始業9時・終業17時の会社の場合は、45分の休憩時間を与えていれば、法律上問題はありません。但し、18時まで残業する日については、労働時間が8時間を超えることになりますので、新たに15分の休憩時間が必要となります。

(注)・・法律上、与える必要がないだけであって、安全面や健康面を考慮して、新たな休憩時間を与えることがベターであることは言うまでもありません。


Q3 「持ち帰り残業」にも残業代は必要?

A3 会社からの指示がなければ、残業代は不要です。

会社から書類を持ち帰り、自宅でこなすという、いわゆる「持ち帰り残業」ですが、会社(つまり上司)からの指示があるかないかで、労働時間であるかどうかの判断が分かれます。


上司からの指示 ⇒ 労働時間 (=残業代必要)
従業員の自己判断 ⇒ 労働時間ではない (=残業代不要)


但し、従業員の方の自己判断の場合であっても、食事も採らず朝方までかかって莫大な量の仕事をこなす、といったケースもあるわけで、「持ち帰り残業」が日常化している会社は、就業規則に自社のルールを明確に規定しておくことが必要でしょう。



Q4 残業代がつかない人って?

A4 いわゆる「管理・監督者」などには残業代の支給は不要です。

労働基準法では、「労働時間」と「休日」について、以下のような規定を設けています。


「労働時間」・・1日8時間、1週40時間(原則)を超える労働の禁止
「休日」・・毎週1回または4週を通じて4回の休日を与えること


どうしても、1日8時間を超える労働(いわゆる残業)や、休日における労働(いわゆる休日出勤)が必要であれば、労使協定を結び、労働基準監督署に届け出て、なおかつ割増手当(いわゆる残業代)を支給することで免責されます。但し、以下の方たちにつきましては、そもそも労働基準法上の「労働時間」や「休日」の規定から除外されていますので、残業代の支給は必要ありません。

① 農業・水産業の従事者
② 監督もしくは管理の地位にある者
③ 機密の事務を取り扱う者
④ 監視業務の従事者
⑤ 断続的労働の従事者


③は秘書の方などを指します。社長と共に行動することが多いので、一般労働者の労働時間にはなじみません。④は守衛や門番の方などを指しますが、常態として緊張度の少ない業務であることが要件です。⑤は社長専属運転手や寮の管理人などを指します。④⑤については、労働基準監督署の許可が必要となります。

さて、②のいわゆる「管理・監督者」ですが、その線引きが難しいとされています。例えば、「課長」という役職を与えればその時点で「管理・監督者」なのか、「店長」という肩書きを与えればその時点で「管理・監督者」なのか。会社が行う線引きと本人の自覚に、食い違いが生じないようにしなければなりません。

具体的には、「管理・監督者」扱いにするには、以下の要件を全て満たさなければなりません。

・ 労働条件の決定や労務管理について経営者と一体的な立場にあること
・ 出退勤について指示命令を受ける立場にないこと
・ 役付手当の支給などその地位にふさわしい待遇が行われていること


つまり、「課長」や「店長」の名前を与えれば、その時点で残業代は発生しない、という考え方は間違いです。



Q5 病欠した日を有給休暇扱いにすることは可能?

A5 会社の裁量によっては可能です。

当日、従業員の方から「具合が悪いので休ませて欲しい」と電話がありました。もちろん欠勤を認めたのですが、翌日、その方が出社してきて、「昨日の欠勤を有休扱いにして欲しい」と言われた場合の対処法についてです。

まず、この会社が欠勤控除を規定している場合、「病欠による欠勤」は控除事由に該当し、1日分の賃金が減額されることになります。しかし、「有休による休暇」の場合は、当然ながら減額は行われません。
ところで、そもそも「有給休暇」とは、労働義務のある日についての労働免除のことをいいます。従業員の方から有休取得の申請があったら、会社はそれを認めなければなりません。但し、会社には「時季変更権」が与えられています。事業の正常な運営を妨げる場合は、従業員の方が指定した日を、別の日に変更してもらうことができます。

病欠により欠勤した日は、それを会社が承諾した時点で「労働義務のある日」とはなりません。また、当日、電話によっての病欠の申し出は、会社が時季変更権を行使する余裕を与えないものです。つまり、有休の事後請求は本来成り立たない性質のもの、ということです。

結果、法的には、会社は病欠を有休扱いにする義務はありません。但し、会社の裁量で「有休扱いにしてあげる」ことは、何の問題もありません



Q6 有給休暇の半日取得は可能?

A6 可能です。「半日」とは、原則的に「午前・午後」で区分されます。

有休とは、基本的には1日単位で取得されるものですが、半日単位の取得を認めていないわけではありません。

例えば、始業9時・休憩12時から13時・終業18時の会社に勤める方が、有休の半日取得を申請したとします。この会社における労働時間は、午前3時間・午後5時間ですが、午前中を有休で休もうが、午後を有休で休もうが、扱いは同じ、ということになります。つまり、午前・午後どちらを有休で休もうが、その日は通常の1日分の賃金が支給されます。労働時間から考えたら、午後に有休で休んだほうが「得」ですが、有休の半日取得は、あくまでも「午前・午後」で判断されます

次に、有休の消化日数についてですが、半日取得の場合、単純に2分の1日が消化されます。年間10日の有休をもっていれば、20回分半日取得が可能です。

また、午前中を有休で休み、午後から出社してそのまま残業した場合ですが、有休で休んだ時間は労働時間には含まれませんあくまでも実労働時間が8時間を超えた場合に、残業代が発生します。



Q7 退職予定者には残りの有給休暇を全部与えなくてはならない?

A7 はい。与えなくてはなりません。但し、円満退職のためにも労使の話し合いが必要と思われます。

従業員の方が退職されるときに、もめる事例の1つとしてあげられるのが、有給休暇の残日数の消化についてです。長年勤めてきた方が、これまで一度も有休取得申請を行ったことがない場合、退職を決意した時点で40日分の有休取得の権利を得ていることになります。例えば、8月31日に10月10日付けで退職する旨の退職届を提出した方が、明日からの40日間で有休を全て消化したい、と申し出た場合、認めなくてはならないのでしょうか?

結論から言いますと、与えなくてはなりません。会社には、事業の正常な運営を妨げることを理由に、時季変更権を行使する権利が与えられていますが、この時季変更権は退職日を超えてまで行使できるものではありません

しかし、実際には、引継ぎの問題などもあるため、会社と退職従業員の方、双方の歩み寄りが必要と思われます。会社は、有休残日数の消化をできる限り認め、退職従業員の方も、必要に応じて出社することが、円満退社の秘訣となります。

お、消化し切れなかった有休について、会社が買い取ることは原則、違法です。但し、2年の時効を超えた部分について買取を行うことは有効ですので、前々年の有休を全て消化していない方には、実質的には消化し切れなかった有休を買い取ることは可能となります。また、前々年の有休を全て消化してしまった方の場合でも、支給の名目を変えて、同額の手当を支給することは、何ら問題ありません。



Q8 パートタイマーが有休取得したときの賃金って?

A8 有休取得曜日に通常支払われる賃金が支給されます。

まず、正社員に比べて勤務日数や労働時間の短いパートタイマーの方にも、有給休暇は発生します。
雇用形態がパートやアルバイトでも、週に5日以上勤務するか、または週の労働時間が30時間以上の場合は、通常の有給休暇日数(正社員と同じ日数)が与えられます。
パートタイマー用の有給休暇日数が該当する方とは、「週に4日以下・労働時間30時間未満」の方です。

ところで、パートタイマーの方たちの労働時間は、曜日によって変わることが多いものです。月曜日は5時間、火曜日・水曜日は休み、木曜日は7時間、金曜日は3時間、土曜日・日曜日は休み、といった就業形態で、時給が1,000円の場合で考えてみます。

まず、もともと休日である火・水・土・日曜日に有休取得の申請をすることはできません。有休とは、「労働義務のある日の労働免除が目的」だからです。この方が、月曜日に有休を取得したら5,000円が支給されます。木曜日の場合は7,000円、金曜日の場合は3,000円です。つまり、金額のみを考えれば木曜日に有休を取得したほうが、断然得、ということになります。

有休とは、「労働義務のある日の労働免除を目的とし、原則、従業員の方の希望する日に取得できる(事業の正常な運営を妨げるときを除く)もの」ということからこのような結果になります。

なお、上記のような支給だと不公平だと感じる場合は、1日の平均労働時間を算出して、曜日にかかわらず「1日の平均日給額」を支給することも可能です。



Q9 遅刻や欠勤が多い従業員を即座に解雇できる?

A9 就業規則への規定が大前提となり、「社会通念上合理的」であることが必要です。

解雇といっても、「普通解雇」「懲戒解雇」では、対象従業員の方への対応が全く異なります。「普通解雇」の場合、解雇予告や予告手当の支給が必要ですし、規定されていれば退職金も支払わなければなりません。これに対して「懲戒解雇」の場合は、労働基準監督署による除外認定を受ければ、解雇予告や予告手当の支給は不要で、退職金も減額または不支給とすることも可能です。但し、もちろん、就業規則にしっかりと規定されていることが条件です。

遅刻や欠勤が多い従業員の方に対して、「懲戒解雇」を行うことができるか、という問題ですが、「6ヶ月間に事前の届出のない遅刻24回、欠勤14日に及び、上司の注意・警告を受けても改まらなかった社員への懲戒解雇処分は有効」、とする判例もあります。つまり、一定期間に相当数以上の遅刻・欠勤があり、反省の面が見られない場合は、「懲戒解雇」を行うことができる、としています。

ただ、単に無断欠勤があっただけの場合や、数分の遅刻が2,3回あっただけで、「懲戒解雇」とするのは「社会通念上合理的」ではありません。上司による注意→譴責(始末書の提出)→減給、と段階を踏んで処罰を行うのが、一般的と思われます。



Q10 「解雇制限」について

A10 業務上災害で休業している期間とその後30日間、産前・産後休業期間とその後30日間は、原則、解雇することができません。

仕事中にケガをして、療養のために1日でも会社を休んだら、「解雇制限」がかかります。休んでいる間はもちろん、職場復帰後30日間についても、原則として解雇することはできません。

女性従業員の方は、妊娠したら産前休業および産後休業をとることができます。産前・産後を理由に休業している期間と職場復帰後30日間については、「解雇制限」がかかります。

「解雇制限」が解除されるときとは、療養開始後3年経過しても治癒しておらず打切補償を支払ったとき(または労災の傷病補償年金を受けているとき)か、天災によって事業を継続することが困難だと労働基準監督署の認定を受けたとき、の2つしかありません。

つまり、「解雇制限」期間中は、懲戒解雇処分すら行うことはできません。




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